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ロジスティード

輸送効率2倍、コスト40%減を実現する包装ソリューションとは

日本パッケージングコンテストでトリプル受賞する包装設計の技術力

製品を物流環境から守ることはもちろん、コストダウン・環境負荷の軽減・作業効率の改善など、包装が担う範囲はひろい。身近な家電製品から重量品まで、幅広い製品に対して、さまざまなデータと経験を駆使し最適な包装を追求する包装設計の仕事をロジスティクステクノロジー部 技師 金井俊介さんに聞いた。

物流の効率化から環境問題の解決まで
広がる包装設計の役割

包装設計とは、製品が物流環境で受けるさまざまなストレスで傷ついたり、品質が落ちたりしないように、製品を保護する包装を設計することを指します。

そのために、事前に物流環境を分析し製品がそのストレスに耐えられるように包装することはもちろん、経済性や作業性など物流をトータルで考えていくことが重要です。

近年では、効率改善などのビジネス課題や、環境負荷の軽減などの社会課題の解決手段として、包装設計の重要度は高まっています。

その課題解決手段の一つとして、ロジスティクステクノロジー部の技師、金井俊介さんが設計した「ワンウェイ段積治具」が、今年の日本パッケージングコンテストで金賞の経済産業省製造産業局長賞(ジャパンスター賞)を受賞しました。

公益社団法人日本包装技術協会が主催するこの賞は、その名の通り、パッケージング、つまり優れた包装設計に対して贈られる賞です。日立物流でも毎年、数多く生み出される包装設計の中から、これはと思われるものを選んで応募し、度々受賞しています。

これまでの受賞一覧

国際輸送の大きな課題を解決したリーズナブルな手法とは

今回受賞した「ワンウェイ段積治具」は、国際輸送の混載における段積みの効率化を狙ったものです。

混載とは、複数の荷主の貨物を一つのコンテナに入れて輸送することを言います。20フィートや40フィートの大きなコンテナを満載にできるお客さまばかりではないため、混載は一般的な手法です。

混載の場合、それぞれの荷物のサイズや形が異なるため、積み込むと上段が凸凹になってしまい、段積みができないこともありました。

そのためコンテナの上部が空いてしまうことも多く、段積みを安全に効率良く行うのは、長い間、国際輸送の大きな課題でした。


これまでは、鋼材製の棚のような器具を設置することで、ある程度の解決を図っていました。しかし、一台あたりが高価なため、送り返す手続きが必要となり、保管や繰り返し利用にあたっての品質チェックなどの管理も面倒でした。

そこで金井さんが考えたのは、鉄ではない材料で同じ事ができないかということでした。低コストの材料であれば、ワンウェイにして管理や送り返す手間とコストを省くことができるからです。

「一番安くできるのは段ボールでした」と金井さんは当時を振り返ります。最初は耐荷重2トンの強化段ボールで考えていましたが、コストがかかり過ぎることがわかりました。

「元々、2トンに耐えられるパレットの流通は少なく、コンテナには最大積載重量が決められています。それを考えると、強度的には500キロで十分だと判断しました」と金井さん。

元々、コストダウンを目的に考えていたので、この現実的な判断も重要なポイントです。

いかにスマートに問題を解決するか

受賞の要因としては、長い間決定打の無かった問題をスマートに解決したことはもちろんですが、環境対策、無人化、省人化といった「サステナブル」な包装が評価のポイントのひとつになったのではないかと分析しています。

段ボールを使うことによる軽量化や、コンテナ積載率の向上によって、結果的に輸送船の燃料節約にもつながるからです。

その他に、多賀営業所の松島武司さん、岡野正人さん、齋藤智由記さんによる「新型サイクロン(掃除機)のための適正包装」は、新型掃除機のパッケージングを小型化することにより、トラック1台(10トン車)あたりの積載量を280箱増やすことに成功。適正包装賞を受賞しました。

那珂営業所、斉藤佑介さんの「アジャスター着脱式緩衝材」は、400キロほどある海外向けの大型医療機器の開梱時に緩衝材の引き抜きが病院スタッフだけでは難しいという問題を解決。大型・重量物包装部門賞を受賞しました。

この3つの包装設計が、2020年度のパッケージングコンテストで受賞を果たしています。

包装で解決できる課題はたくさんある

金井さんがこれまで手掛けた仕事の一つに、フィリピンから日本に摂氏5度以下の温度でモノを運びたいのだけど断熱材が無い、しかし1週間以内に発送しなければならないという案件があったそうです。

それに対して、金井さんは、強化段ボールにドライアイスを仕込んだ箱を作ることで解決したとのこと。その仕事から温度管理に興味を持ち、今後の取り組みとして、「温度管理を保冷車に頼らず梱包箱だけで解決できるリーズナブルなソリューションを設計したい」と考えているそうです。

「それこそいま、新型コロナウイルスのワクチン輸送では、低温輸送が注目されていますが、低コストで高品質な、まったく新しい箱ができないかと考えています」と金井さんは言います。

「包装設計の仕事には、このような事例が数多く積み重ねられています。それらのエピソードを知ることで、ロジスティクスにおける包装の重要性と面白さを多くの方に気づいていただきたいと思います。」

※所属部署、役職等は取材時のものになります。