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ロジスティード

現場の力でお客さまの課題に取り組む
デジタル事業基盤を活用し、事業者間の物流情報を連携

発注から店舗到着まで、シームレスなトラッキングを実現する

異なる事業者間の出荷情報と配送情報は、相互に連携されない。BtoB物流に残るこの不便な商習慣を変えるシステムの開発に取り組んだ、日立物流、日立物流ソフトウェアのメンバーに話を聞いた。

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なぜ、シームレスなトラッキングができないのか。

一般生活者向け(BtoC)のEC物流では、出荷待ち、配達中など、自分が注文した商品が今どのような状態なのか、いつごろ手元に届くのかなど、インターネットを使って簡単に確認できるようになりました。

それに対し、事業者向け(BtoB)物流の場合、いまだにシームレスな配送状況のトラッキングは同じようには実現できていません。

日立物流、日立物流ソフトウェアは、メガネブランド「JINS」を展開する株式会社ジンズと、この不便な状況の解消に取り組みました。

同社が倉庫にある商品を各店舗に配送する場合、各店舗から本部に発注情報が入り、それに合わせて倉庫運営事業者である日立物流に出荷指示が出されます。その情報をもとに日立物流は荷物の準備を行い、出荷準備が整った後、商品は配送事業者である佐川急便の手に渡り、店舗に向けて配達される、という流れになっています。

この流れだけを見れば、BtoCのEC物流と同じように簡単に配送状況の確認ができるように思えるかもしれません。

しかし実際には、数ある商品を種類単位、必要な数量で店舗ごとに分けるため、荷物の大きさや数もさまざま。また、配送事業者は効率的な配送方法を組み立てるため、同じ店舗への配送であっても複数個口に分かれることもあり、かなり複雑な配送になります。

「店舗は配送会社の追跡番号ではなく、自分たちの発注番号や客注 (店舗に在庫が無い商品を顧客が注文し受け付けること) などの伝票区分を切り口に出荷ステータスを確認するので、商流と物流の情報を組み合わせることがポイントになります。」と話すのは、ジンズとの開発窓口になった日立物流の田代氏です。

ただ、これまでの物流業界の商習慣として、倉庫運営事業者も配送事業者も、それぞれの役割のなかで業務の最適化を進める、というのが自然な流れだったため、倉庫から出荷し店舗に届ける配送までを同じフレームのなかで考える、ということは、あまりなされてきませんでした。

そのため、倉庫運営事業者の情報は発注・出荷情報、配送事業者の情報はトラッキング情報、というように、それぞれが独立した情報として分かれているのが一般的でした。

発注・出荷情報、配送情報を連携し、リアルタイムで配送情報の確認ができる

日立物流と日立物流ソフトウェアがジンズと共同で開発した「SCLINK+ Mobile(エスシーリンクモバイル)」は、デジタル事業基盤上で、日立物流のWMS(倉庫管理システム)で管理している発注・出荷情報と、配送事業者(佐川急便)が保有するトラッキング情報を紐づけ、どちらの情報からでもジンズ店舗の発注単位ごとに、リアルタイムで荷物の配送状況の確認ができるシステムです。

「一般的にWMSでは倉庫を出てからの情報は保持しないことが多いですが、このシステムではデジタル事業基盤でWMSの情報と佐川急便が保有しているトラッキング情報を紐付けることで、倉庫管理事業者と配送事業者とのデータ連携を可能にしました。」(岡田氏)

さらにこのシステムは、佐川急便だけでなくさまざまな宅配事業者に対応したマルチキャリア設計になっており、どの宅配業者を使っているお客さまでもスムーズに導入を検討できます。

「このシステムでは、発注・出荷情報と配送情報とがひとつの情報として認識され、管理されます。この情報連携により、"商品から箱を追う"ことや、"どの箱の中に何が入っているか"、"客注の商品はどこにあるか"といったことを事前に確認することができるようになりました。また、荷割れがあるかどうかも事前にわかり、別便で届くのか、あるいは日をまたぐことになるのか、といった情報も正確に知ることができます。」(古山氏)

「SCLINK+ Mobile」の仕組み
「SCLINK+ Mobile」の仕組み

必要な情報をモバイル上にわかりやすく表示
店舗スタッフがストレスなく使えるユーザーインターフェイスを実現

このシステムは、ジンズが日常業務で活用されているiPod touch上で使うことを前提に開発されました。

開発に携わった日立物流ソフトウェアの松本氏は、今回の開発上のポイントを次のように話しています。

「PCの画面上で確認していた情報をiPod touchの小さな画面で再現し、かつ店舗スタッフの方が、接客をしながらでも簡単に使えるようにする必要がありました。そのため、情報の絞り込みに加え、画面のタッチ数を減らし、目的の情報に最短で到達できるUI(ユーザーインターフェイス)の設計が重要でした。テスト画面を作っては、ジンズさまの店舗スタッフにチェックしてもらい、トライ&エラーを繰り返しながら、完成形にもっていきました。また、ブラウザベースで構築しているため、iPod touchに限らず幅広いデバイスに対応でき、端末増設の際も導入コストを下げることができます。」

「今回のSCLINK+ Mobileの開発は、物流業界の古い商慣習を刷新するものになりました。今後は日立物流の提供するさまざまなソリューションの一つとして、多くのお客さまにご活用いただきたいと考えています。」(田代氏)