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ロジスティード

統合報告書2021 オンライン版

社長メッセージ -To Our Stakeholders-

LOGISTEED

次なる成長ステージへの移行をめざし、
「LOGISTEED」のさらなる進展と
盤石な経営基盤の確立・増強に向けた
投資を拡充していきます。

2021年9月 代表執行役社長
中谷 康夫

コロナ禍での価値創造

改めて認識した「使命」と「存在意義」

新型コロナウイルス感染症の影響を通年で受けた2020年度は、物流業に携わる私たちの存在意義を改めて認識した1年となりました。物流業はそもそも、作り手が生み出したモノをエンドユーザーや社会に届けることによって「価値」を生み出し、それを「使命」としています。当社グループは70余年前の創業時から一貫してこの使命を担ってきましたが、近年はコロナ禍に加え、気候変動により激甚化する自然災害などによってサプライチェーンが分断される事例が相次ぎ、そうした非常時にあっても人々の生活や社会経済活動を維持するための物流業の責務は、もはやモノにまつわる価値を運ぶだけでなく、「世の中のサプライチェーンの流れを止めない」ことへと変わりつつあります。私はこれこそが、現在のようにグローバルリスクが拡大し、先行きが読みにくい時代における物流業の「存在意義」であると考えます。

当社グループにおいても、2020年度は「物流を止めない」という我々とお客様に共通する使命を全うするため、従業員の体調管理の徹底や非接触型オペレーションの早期導入、新規案件の遠隔立ち上げ等によって社内での感染予防と感染拡大を防止し、また、産業分野の違いによって生じた物量の不均衡に対してはグループ内人財の流動化で対応するなど、知恵を絞り、創意工夫を重ねることで安定的な事業運営の継続に注力しました。これにより、お客様のサプライチェーンを支え、人々の生活や社会経済活動の維持に貢献できただけでなく、創意工夫が収益性の改善にもつながり、過去最高益※1を更新することもできました。不透明な事業環境が当面は続きますが、当社グループは今後も創意工夫を重ねながら、「世の中のサプライチェーンの流れを止めない」ことを存在意義としていきます。

※1 調整後営業利益ベース

VC21活動で創意工夫を共有し、HB WAYの実践につなげる

前述のとおりコロナ禍でも効力を発揮し、サプライチェーンの維持に貢献したさまざまな「創意工夫」は、当社グループならではの価値創造の源泉であり、HB WAYの実践に直結するものです。HB WAYの浸透に向けては「携行カード」の配布やポスターの掲示、社内報への漫画掲載や映像教材の作成・展開などを実施していますが、中でも2020年度、特に注力し、かつ効果を発揮したのが「VC21※2活動(以下、VC21)」です。HB WAYを実践するための日々の改善活動であるVC21では、従業員がさまざまなテーマで発案した改善策を専用システムに登録し、改善活動のPDCAサイクルを国内約300の事業所で回しています。執行役会では全社の施策を把握・評価しながら組織ごとの進捗状況を確認し、優れた取り組みについては全社発表会にてグループ全体で共有しながら表彰するほか、「褒める文化」の醸成に努めています。あわせて、同活動による生産性の改善を定量効果として「見える化」することで、従業員一人ひとりが「わたくしごと」として取り組む改善文化が定着しています。2020年度の全社発表・表彰イベントは残念ながらコロナ禍のためオンライン開催となりましたが、逆に、多くの従業員が同時に好事例を共有するというオンラインならではのメリットもありました。コロナ禍での物流オペレーションを支えるいくつかの創意工夫も、VC21によって生み出されています。今後は、DXや脱炭素への取り組みにおいても、同活動を中心に推進する方針です。

※2 VC21:Value Change & Creation 2021

外部環境認識

物流業界の「ボーダーレス化」が続く

昨年の統合報告書でもお伝えした物流業界の「ボーダーレス化」は足元でも進行しており、大手ECプラットフォーマーの成長や、第三者による物流領域への参入は今後も続く見込みであることから、当社グループは、従来の物流領域にとどまることなく、物流領域を超えた価値創造をめざすビジネスコンセプト「LOGISTEED※3」を推進することで、中長期的な成長力を強化していきます。特に当社グループのルーツであり、物流業に隣接する「モノづくり」領域への進出については着実に成果を出し始めており、サプライヤーから収集した部品を組立ラインへJIT(ジャストインタイム)で供給するサービスや塗装サービス、許認可が必要な化粧品の成分表示ラベルを貼付するサービスなど、従来はお客様が自社工場で行っていた作業を当社が行うことで事業領域を拡大しています。今後はこうした前工程・後工程も含めた「モノづくり」領域での協創の可能性を海外でも追求していくほか、後述する「SSCV※4(輸送デジタルプラットフォーム)」のように、当社自身のために作った仕組みをステークホルダーの皆様にご利用いただく協創も拡充していきます。これにより、将来的には、『当社グループの業態は物流業ではなく「LOGISTEED」である。』と申し上げられるステージへの移行をめざしていく構えです。

※3 LOGISTEED(ロジスティード): LOGISTICSと、Exceed、Proceed、Succeed、そしてSpeedを融合した言葉であり、ロジスティクスを超えてビジネスを新しい領域に導いていく意思が込められています。
※4 SSCV:Smart & Safety Connected Vehicle

地政学リスクの高まりや物流の需給ひっ迫を踏まえ、地域完結型ビジネスも強化

2020年度に大きく利益を伸ばした国際物流については、グローバルサプライチェーンにまつわる地政学リスクの高まりや海上コンテナ不足、航空貨物のスペース不足等を背景に、今後は国際輸送だけでなく、地産地消に軸足を置いた地域完結型のサプライチェーンを構築する事業機会も増えると見ています。当社グループも、欧州におけるインターモーダルやアジア域内のトラック輸送など地域ごとのビジネスモデルを拡充するような投資を実施することで、リスクの裏側にある事業機会を着実に取り込んでいきます。
そして、機能としての物流強化(スマートロジスティクス)を中核としながらも、事業・業界を超えた協創領域の拡大を図り、ロジスティクスの領域を超えた新たなイノベーションを創出し、エコシステム(経済圏)の形成・拡大を図るという「LOGISTEED」のコンセプトを、国内外の具体的な戦略として展開するべく2019年度から取り組んできたのが、中期経営計画「LOGISTEED 2021」です。

成長戦略

堅調な利益成長を踏まえ、中長期的成長へ向けた戦略投資を継続

中期経営計画「LOGISTEED 2021」においては、「グローバルサプライチェーンにおいて最も選ばれるソリューションプロバイダ」に向けて、「LOGISTEED」が掲げる姿へと変化・進化を遂げるべく、重点施策として「強固なコア領域(スマートロジスティクス領域) 構築のためのM&A・アライアンスも含めたポートフォリオ戦略の実行」「コア領域を強化するとともにさらなる領域拡大へとつなげる協創戦略の実行」「物流領域を基点/起点としたサプライチェーンのデザイン」「トップライン※5成長戦略の実行」「次世代につなぐオペレーションオリジン(現場主義)とその継承」「環境・社会・ガバナンスと企業倫理」に注力してきました。
その結果、2年目の2020年度はコロナ禍の影響による自動車関連輸送の落ち込み等からトップラインは伸び悩んだものの、前述の通り利益成長は確保できたことから、最終年度となる2021年度は、次の3点を軸とする戦略投資を実施していきます。

※5 トップライン:損益計算書の最上部に記載される項目である売上高(売上収益)のこと。

現場の改善マインドに根差したデジタル化投資を拡充

1点目は、中長期的な成長と発展に向けた事業基盤をより一層強固なものとするべく、さらなるDX(デジタルトランスフォーメーション)と自動化へ向けた投資を拡充していきます。具体的には、デジタルによる「倉庫・輸送作業の連動」「標準化・類型化された作業・業務プロセス」「知恵の結集」を加速することで、当社グループの「物流の高度化」と「コネクテッドサプライチェーン」の実現につなげていきます。
その際の基本方針は現場(フィジカル空間)にあるデータをデジタルで収集し、サイバー上で分析しながらアナログの知恵を加え、再び現場にフィードバックするというサイクルを回すことをDXの方針としています。私は改善マインドと創意工夫がない限り、デジタル化は進まないと考えており、VC21をはじめとする「物流現場の改善マインド」と「見える化」の延長線上にDXを据えています。こうした社内のDX(インターナルDX)において、業務を効率化しデータを集約するために、今後は倉庫内作業の「見える化」や基幹システムの刷新のほか、RPAの強化にも取り組む構えです。一方、「SSCV」「SCDOS※6」、「スマートウエアハウス」といった社外のDX(エクスターナルDX)についても絶えずブラッシュアップを図ることで、お客様をはじめとするステークホルダーの皆様に最新の付加価値を提供していきます。

※6 SCDOS:「Supply Chain Design & Optimization Services」の略であり、お客様のサプライチェーン上のデータを一元管理・可視化するサービス

海外での「LOGISTEED」実現に向けたパートナーとの協創拡大

2点目は、国際事業のさらなる成長へ向けた海外投資です。国内事業は引き続き重要な経営基盤ではあるものの、当社グループの中長期的な成長戦略において、国際事業のさらなる強化は不可欠です。2020年度はコロナ禍ではあったもののインドでの事業拡大戦略の一環としてチェンナイ近郊に物流センターを開設し、2021年度は米国・オランダで拠点を開設・増強予定であるほか、インド、マレーシア、インドネシアでも2022年度以降の拠点開設・増強に向けた投資を進めています。これら一連の投資により、2021年度~2023年度の主要計画累計で120億円超をグローバル成長戦略の加速に振り向ける計画です。

また、当社グループは1976年のシンガポール法人の開設以来さまざまな国と地域で国際事業を展開してきましたが、これまでの成功/失敗の経験を踏まえ、現在進めている海外投資の多くは現地パートナーとの協創によって展開し、現地法人に裁量を与えながら当社は管理に徹する「地域完結型モデル」を推進しています。今後はデジタル化・自動化・省人化も加味していくことで、国際事業での「LOGISTEED」を実現する手がかりとしていく構えです。その一環として、デンマークの大手国際海運会社であるMaersk社と2020年度より協創活動を開始しました。グローバルでシームレスなLogisticsを提供すべく、同社との人財交流などにより、双方の事業拡大の加速につなげていきます。


経済・社会・環境価値の創出に向けて、「SSCV」への投資を拡充

3点目は、前述の「SSCV」への投資の拡充による経済・社会・環境価値の創出です。ドライバーの体調・労務管理、事故防止、輸送効率化によるCO₂排出量削減等の社会課題に貢献する同サービスは、特集(P39-44)でご紹介している通り外販による事業化が始まっており、中長期的には、他の輸送事業者(陸運、旅客等)への展開や、ビッグデータを利活用した新サービス・新ビジネスの創出へとつなげていきます。また、このように当社自身のために始めた取り組みが他の事業者様や社会全体にも価値を生み出せるようなビジネスモデルを今後も展開していく方針です。

「協創」を全ての成長戦略の根底に据える

これら全ての成長戦略において、当社は引き続き「協創」をキーワードとしていきますが、その契機は2つあります。
1つ目の契機は、日本における少子高齢化の加速です。当社グループは2000年代前半から2010年頃までは自社の経営リソースを中心に事業を展開することを基本方針としていましたが、物流センターの作業員やトラックドライバーの採用難が大きな課題として顕在化するにつれてそのスタンスを改め、常日頃から協創活動を積み重ねることでリソースを確保する方針に転換しました。
2つ目の契機は、現場オペレ―ションの自動化の取り組みです。少子高齢化への対応策の1つとして自動化への取り組みをスタートした当初は現場から強い抵抗がありましたが、日立製作所をはじめとする協創パートナーのサポートにより実施してみると明確な効果が得られ、変化の激しい時代においては、自分達に「何ができるか」ではなく「何ができないか」をいち早く自覚し、必要なパートナーと協創をすることが解決への最短距離であることを実感しました。当社グループは今後も「協創」を全ての成長戦略の根底に据え、スタートアップ企業や、国際輸送に強みを持つ同業他社、あるいは自動化の深い知見を有するマテハンメーカーなど多くのパートナーとの取り組みを継続することで、エコシステムの拡大と、「LOGISTEED」による持続的成長への道筋を確かなものにしていきます。

ESG経営と今後の新型コロナウイルス感染症対応

「シェアリング」をキーワードに、現場での取り組みを積み上げる

当社グループは今後も、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けたESG経営を推進し、SDGsの達成に貢献する4つの注力分野への取り組みを強化していきます。その際に私が最も重視したいのが、ESGと事業を結びつけ、現場での取り組みを積み上げること、そして「シェアリング」というキーワードです。E(環境)における「脱炭素」へ向けたCO2排出量削減への取り組みでは、同業他社とトラックや倉庫を融通し合って積載効率や輸送効率を高める「シェアリング」や、複数のEC事業者が施設・設備をシェアリングすることで環境負荷を低減するECプラットフォームが非常に有効な手段となります。例えば本年2月に開設した水戸輸送センターでは、貨物・車両情報や事務所・車庫といった地域における輸送リソースを協力パートナーとシェアリングし、輸送エコシステム全体の効率的な運営を実現しています。こうした取り組みに加え、今後は「脱炭素モデル事業所」の設置による効果測定や評価方法の検討、SCDOSによるCO₂排出量の見える化のほか、VC21による環境活動の「わたくしごと化」といった取り組みも現場で積み上げることで、事業プロセスにおける脱炭素の実現をめざします。
S(社会)への取り組みの中核であり、注力分野「労働安全と生産性の向上」の活動テーマである「多様な労働力の活用推進」においては、2023年度目標である「女性管理職比率10%(日立物流単体)」の達成に向けて取り組んでいるほか、海外グループ会社では女性のトップや経営層が多く活躍していることから、当社グループ全体の女性活躍推進の取り組みは順調に進んでいると自負しています。各地域における人財の活躍については、物流は国や地域によって状況が大きく異なることから今後も地域完結型モデルによる現地での活躍・成長を促進するとともに、必要に応じ、新たなスキルを自国外で学んでもらう仕組みを継続します。将来的には、連結売上高の国際比率が50%程度になる頃を目安に、各地域で経営に携わった人財を、国籍を問わず当社全体の経営層として登用する体制を構築していく構えです。
G(ガバナンス)への取り組みにおいては、今後も「基本と正道」を徹底することでコンプライアンスとガバナンスを強化していきます。特に海外拠点のガバナンスについては資金の出入りを確実にモニタリングし、不正常な取引が発生する環境と機会そのものを根本から除去することを基本方針としていきます。コロナ禍で監査の往査が難しくなっていることから、現地監査法人等の外部リソースの活用や現在進めている基幹システムの刷新、プロセスマイニング等の活用により、最終的にデジタル監査環境も整備することでさらなるガバナンス強化を図ります。加えて、取締役会においても、ESGやサステナビリティについての議論を深め、経営の本質にまつわるテーマとして取り扱っていく方針です。

従業員の健康と安全を守りながら、サプライチェーンを支える

新型コロナウイルス感染症については足元ではワクチン接種が進むものの、変異種の拡大もあり収束が見えないことから、「ウィズコロナ」の時代は、私たちが想像する以上に長期化する可能性もあります。当社グループはそうした中にあっても物流業としての使命を果たし、世の中のサプライチェーンそのものを支えていくため、引き続き非接触オペレーションや自動化に注力しながら従業員の健康と安全を守り、お客様のご要望に応えていきます。また、産業分野の違いによって生じる物量の不均衡に対しては今後もグループ内人財の流動化によって対応することを基本方針とするとともに、この取り組みは従業員のスキルの多様化や雇用の維持にもつながることから、継続していく所存です。

ステークホルダーの皆様へ

次なる成長ステージへ向けて、「LOGISTEED」のさらなる進展に向けた投資を拡充

中期経営計画「LOGISTEED2021」も最終年度を迎えていますが、私はこれまでの取り組みにおいて、物流領域を超えて協創を加速し、エコシステムを形成するコンセプトとしての「LOGISTEED」に想定以上の手応えを感じています。この2年間で、当社グループはさまざまな領域で新たな価値創造に取り組み、成果を出していることから、引き続き、「LOGISTEED」をコンセプトに中長期的な成長と企業価値向上へとつなげていきます。
そして、次なる成長ステージへの移行をめざし、デジタル化やSSCVなど「LOGISTEED」を象徴するサービスの拡充、さらに海外展開やESGへの取り組みを含むさまざまな分野での投資を従来よりも大きなスケールで実施することで、盤石な経営基盤を確立・増強し、さらなる事業領域の拡大と利益成長を実現していきます。また、このような投資の拡大が、協創パートナーをはじめとするステークホルダーの皆様と当社が形成するエコシステムをさらに拡大させ、より大きな社会的価値創造につながることは言うまでもありません。
今後も当社グループの「LOGISTEED」に関連する情報発信を充実させてまいりますので、ステークホルダーの皆様には、引き続き変わらぬご支援・ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

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