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ロジスティード

統合報告書2021 オンライン版

CFOメッセージ

トップラインの拡大と中計目標の達成、
および中長期的成長の実現に向けて、
国内外での取り組みを進化させていきます。

執行役専務 財務戦略本部長
林 伸和

成長を支える財務戦略を「攻め」と「守り」の両面から遂行する

中期経営計画「LOGISTEED 2021」の最終年度である2021年度は、昨年の統合報告書でお伝えしたCFOの役割『経営と現場の「架け橋」となること』において、会社全体の方向性を「トップラインの拡大」にシフトさせることに注力しています。
近年の内部効率や収益性改善への取り組みが奏功し、当社グループの営業利益率は着実に上昇しています。一方、足元ではトップラインの伸び悩みが課題となっており、中計最終年度の営業利益目標※1を着実に達成するには、トップラインの再拡大が強く望まれる状況です。そこで、まずは経営陣自らがお客様幹部との接触を増やすなど営業を強化しているほか、役員で組成する「トップライン拡大プロジェクト」が、新規顧客の獲得に向けた戦略を再構築しています。トップラインの拡大に向けてはお客様からの新規受注条件を満たすだけでなく、「日立物流らしさ」を強く打ち出すことが重要であることから、物流現場におけるDXやESGへの取り組みなど、当社ならではの特長を個々のお客様に合わせチューニングしながら訴求できるよう注力しています。
こうした「攻め」の取り組みの一方、「PM(プロジェクトマネジメント)推進本部」や「不祥事撲滅委員会」など、「守り」によってトップラインを下支えする取り組みもCFOとして主導しています。具体的には、PM推進本部では新規受注案件を着実に収益に結び付けるため8段階のフェーズゲートで準備状況の管理をしているほか、既存/新規を問わず、入札時の提案内容をチェックすることで失注リスクの低減に努めています。また、私が委員長を務める不祥事撲滅委員会では、請求・支払い等の事務ミスを含むグループ内の不祥事やトラブルを一元的に把握し、再発防止へ向けたPDCAを監査室や各統括本部と連携しながら回すことで健全・正常な事業運営を担保し、トップラインを下支えしています。

※1 2019年5月24日公表目標に対し、IFRS第16号「リース」適用影響を加味した当社認識目標(調整後営業利益385億円)

「守り」の財務戦略の遂行においてDXを加速

「守り」の財務戦略の遂行においては、DXも積極的に推進しています。具体的には、決裁文書や契約書、押印の電子化を進めたほか、基幹システムへの入力手法をグループ全体で統一することで効率性が大きく改善しました。また、パートナー社員をはじめとする場従業員の勤休管理に指静脈認証を導入することで、出退勤だけでなく作業効率についてもデジタルによる「見える化」が進んでいます。
加えて、足元では基幹システムのリニューアルを進めており、国内外のデータを一元管理できる仕組みを構築中です。これにより監査業務におけるDXが加速し、監査時間の短縮・効率化・精緻化を実現できるほか、ガバナンスの実効性強化にもつながる見込みです。

中期経営計画の達成と中長期的成長へ向けて、戦略投資とVAS(付加価値作業)戦略に注力

トップラインの拡大という「攻め」においては、前述の「日立物流らしさ」を際立たせるための戦略投資を継続していきます。具体的には、物流現場の自動化・省人化、見える化等のDX分野や環境投資など、今後も年間30億円※2程度の戦略投資を継続していく予定であり、「スマートウエアハウス」の取り組みとして、無人フォークリフトやAGV、RPA等の開発・導入を拡充するとともに、これらを組み合わせて統合的に制御・管理する仕組みの構築にも注力しています。また、輸送デジタルプラットフォームである「SSCV」、サプライチェーン最適化サービスである「SCDOS」の展開も強化し、トップラインの拡大や協創パートナーとのエコシステムの形成・拡大につなげていきます。海外での戦略投資については、米国、オランダ、インド、マレーシア、インドネシアで拠点を拡充していきますが(社長メッセージ P.18)、3PL事業に欠かせない倉庫の開設・増強にあたっては、各地の政治・経済動向やお客様ニーズを見極めながら、「自家投資」と「賃貸・リース」を使い分けることでリスク低減を図ります。

※2 連結損益計算書に計上するコスト

また、物流領域を超えた「LOGISTEED(ロジスティード)」の実践事例として、「モノづくり」領域での事業拡大に注力しています(社長メッセージ P.17)。このたび新たに受注した建機メーカー様向けの調達物流では、生産ラインに沿った荷揃えも当社が行うことで新たな付加価値を提供し、トップラインの拡大に貢献しています。こうした事業領域拡大の取り組みを「VAS(Value Added Service)戦略」と位置づけ、さらなる拡大へ向けたサポートに注力しています。

ROIC経営の深化に向けて

2018年度から始めたROIC経営への取り組みにおいては、「浸透」に向けたeラーニングの実施や、「深化」に向けたROICツリー予算調書の策定を進めています。

2020年度は、ROICの考え方を分かりやすく解説した資料を英語版で作成・配布・解説することで海外拠点での浸透を加速させたほか、ROICツリー予算調書では、「売上拡大」や「効率向上」「売上債権の早期入金」といった具体的なアクションアイテムを設定することができました。
今後は、「現場で何をすればROICが上がるのか」という現場起点の「ROIC逆ツリー」の考え方を強化しながらさらなる浸透を図るほか、縮小均衡に陥ることがないよう、トップラインの拡大による成長を前提としたROIC改善への取り組みに注力します。
また、ROIC経営の今後の「進化」に向けた拠点別BS(貸借対照表)管理や拠点別ROICの導入へ向けて、現在、物流センターなど各拠点別の収支を基幹システム上で一元管理する仕組み作りを進めています。これにより、将来的には拠点別のBS・PL(損益計算書)の自動生成が可能となり、拠点別ROIC改善への取り組みが大きく進展する見込みです。

今後のグローバル成長戦略の加速に備え、海外での財務リスク低減や税務ガバナンスの強化に注力

財務リスクへの対応については、地政学リスクやカントリーリスクの高まりを踏まえ、海外での取り組みに注力しています。
具体的には、まず海外現地金融機関からの借り入れを削減し、親子ローンなどグループ内金融に切り替える取り組みを加速しているほか、各国の為替防衛策やマイナス金利政策に起因する為替影響の低減に向けては、当社グループの地域内プーリングや親子ローンを駆使し、為替差損の発生を最小限にとどめるよう努めています。これら一連の取り組みにより、今後のグローバル成長戦略の加速を着実に収益に結びつけていく構えです。
また、2019年にGRI※3スタンダードの1項目として設定された税務ガバナンスについては当社も重要な経営課題の1つとして認識しており、グローバル成長戦略の加速に向けた「守り」の1つとして、海外税務ガバナンスの強化に取り組んでいます。2018年に設立した税務統括部が中心となりBEPS※4対応をはじめとする海外税務対応を強化しているほか、各地域の大手監査法人と連携しながら現地法人の税務ガバナンスをチェックすることで、リスク低減を徹底しています。

※3 GRI(Global Reporting Initiative):サステナビリティ報告に関する国際基準を策定している非営利団体
※4 BEPS(Base Erosion and Profit Shifting):税源浸食と利益移転

成長資金を確保しつつ、安定的な増配に努める

当社は引き続き、中長期的視野に基づく事業展開を考慮し、内部留保の充実によって企業体質の強化を図りつつ、安定的な配当の継続に加え、業績に連動した利益還元に努めることを利益配分の基本方針としていきます。この方針のもと、成長のための資金を確保しつつ、安定的な配当(増配)を継続することに努めていきます。
また、当社は資産効率および株主価値向上の観点から、2021年6月・9月に保有する自己株式を消却し、東京証券取引所の新市場区分であるプライム市場の上場維持基準の1つ「流通株式比率35%以上」に適合しています。今後の「LOGISTEED」の実現に向けた戦略投資やアライアンス、M&Aにおいては、主にキャッシュや金融機関からの借入を活用していくことを検討していきます。

リモートと英語を駆使した次世代財務人財の育成を加速

国内外の次世代財務人財の育成においては、従来はオフラインでの教育を基本としていましたが、2020年度はコロナ禍の影響からリモートでの教育に切り替えたところ、想定以上に有効であることを実感しました。そのため、今後はこれを「ウィズコロナ」の1つとして積極的に活用するべく、2021年度は、北米、欧州、アジア、中国でのリモート教育を予定しています。また、近年は海外各拠点・グループ会社の財務担当者の多くがナショナルスタッフであり、英語でのコミュニケーションに多くの人財が習熟していることから、今後は、リモートと英語を駆使しながら次世代財務人財の育成を加速していく構えです。

株主・投資家の皆様との双方向の対話を重視

当社グループは今後も、DXや脱炭素への取り組みをはじめ多くの戦略投資に注力する方針であり、株主・投資家の皆様との対話においては、ROIC、ROE、配当政策に関する丁寧な説明を心がけていきます。2021年度はリモートの活用が増えたこともあり、例年より多くの株主・投資家の皆様との対話を実施できたほか、実際に当社株式を保有する株主の皆様から、当社の情報発信にまつわるアドバイスなど多くの示唆をいただき、改善につなげることもできました。今後も、株主・投資家の皆様との対話を大切にしながら信頼関係を維持し、持続的な企業価値向上をめざしていきます。

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