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ロジスティード

統合報告書2022 オンライン版

To Our Stakeholders ─ 会長メッセージ ─

LOGISTEED

新たなパートナーシップのもとでLOGISTEEDを加速し、「グローバル3PLリーディングカンパニー」をめざします。

2022年9月 代表執行役会長(CEO)
中谷 康夫

中期経営計画「LOGISTEED2021」の総括

売上収益と営業利益※1は過去最高を更新し、中計数値目標を達成

2019年度より開始した中期経営計画「LOGISTEED2021」では、「グローバルサプライチェーンにおいて最も選ばれるソリューションプロバイダ」に向けた6つの重点施策として、「強固なコア領域(スマートロジスティクス領域)構築のためのM&A・アライアンスも含めたポートフォリオ戦略の実行」「コア領域を強化するとともにさらなる領域拡大へとつなげる協創戦略の実行」「物流領域を基点/起点としたサプライチェーンのデザイン」「トップライン※2成長戦略の実行」「次世代につなぐオペレーションオリジン(現場主義)とその継承」「環境・社会・ガバナンスと企業倫理」に取り組み、「LOGISTEED※3」が掲げる姿への変化・進化に注力してきました。
その結果、最終年度の2021年度は連結売上収益および同営業利益※1は過去最高を更新し、同中計で掲げた数値目標を達成することができました。

※1 調整後営業利益ベース
※2 トップライン:損益計算書の最上部に記載される項目である売上高(売上収益)のこと。
※3 LOGISTEED(ロジスティード): LOGISTICSと、Exceed、Proceed、Succeed、そしてSpeedを融合した言葉であり、ロジスティクスを超えてビジネスを新しい領域に導いていく意思が込められています。

海外事業の進展に課題

重点施策ごとに振り返ると、まず「強固なコア領域(スマートロジスティクス領域)構築のためのM&A・アライアンスも含めたポートフォリオ戦略の実行」においては、(株)日立オートサービスや(株)日立トラベルビューロー(現(株)HTB-BCDトラベル)の株式を譲渡した一方、パレネット(株)の株式取得や(株)日立ライフ(現(株)日立リアルエステートパートナーズ)の流通サービス事業の譲り受け等によって新たな価値創造の源泉が加わり、コア領域の強化は相応に進んだと評価しています。国際物流におけるポートフォリオ戦略においては、日新運輸(株)と(株)エーアイテイーの株式交換を実施したもののコロナ禍の影響もあり、海外では少しダイナミックさに欠けていたと認識しています。この点は、新中期経営計画に持ち越された最大の課題であると認識しています。
また、「コア領域を強化するとともにさらなる領域拡大へとつなげる協創戦略の実行」においては、SGホールディングスグループとの資本関係の一部を見直したものの、営業連携やリソースシェアリングなどの協創活動による着実な業績寄与があったほか、トップマネジメントから現場に至る各レイヤーで両社の相互理解とコミュニケーションも深まったことから、今後もこの取り組みを継続します。
続いて「物流領域を基点/起点としたサプライチェーンのデザイン」においては、SSCV※4(輸送デジタルプラットフォーム)やSCDOS※5(サプライチェーン最適化サービス)といったDXソリューションの外部提供を開始したほか、RCS※6の特許を取得するなど大きな進捗がありました。そして「次世代につなぐオペレーションオリジン(現場主義)とその継承」については、VC活動※7を中心とし、コロナ禍においてもオンラインにて活動を継続するとともに、DXなどさまざまなテーマに取り組み、着実に成果を積み上げることができました。
最後に「環境・社会・ガバナンスと企業倫理」においては、環境中長期目標2030/2050を策定・更新のうえ2050年のカーボンネットゼロに向けた取り組みを開始したほか、TCFD※8提言への賛同を表明し、CDP※9による気候変動レポート2021では、2年連続で「A-」評価を獲得することができました。

※4 SSCV:Smart & Safety Connected Vehicle
※5 SCDOS:Supply Chain Design & Optimization Services
※6 RCS:Resource Control Systemの略で物流センター内の自動化設備の稼働情報および作業者の実績情報を把握し、各設備や作業者への指示を行う作業実行機能を備えた統合制御システムのこと
※7 VC:Value Change & Creationの略。HB Wayを実践する日々の改善活動のこと
※8 TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)
※9 CDP:英国の非営利団体。世界の投資家の依頼を受け、企業の「気候変動」などに関する情報を調査し、評価・公表している。

外部環境認識と対応策

VUCA※10の様相の強まりと各種リスクの増大を踏まえ、「地域完結型」の海外事業を加速

新型コロナウイルス感染症に代表される感染症リスクのほか、米中対立や足元のウクライナ危機に象徴される地政学リスクの高まりなど、近年の事業環境おける「VUCA」の様相は、ますます強まっていると認識しています。実際に、製造業を中心とするグローバルサプライチェーンにおいてはコロナ禍やウクライナ危機をきっかけに混乱が生じ、物流セクターへの影響もますます大きくなり始めています。例えば2021年度における当社グループの自動車関連顧客向けの事業については、地域完結型のサプライチェーンが確立している米国では比較的堅調に推移したものの、アジア圏ではコロナ禍によるグローバルサプライチェーンの混乱に起因する減産の影響により物量が低迷しました。
また、複数地域をまたぐフォワーディング事業における海上・航空運賃の上昇・高止まりは、当社グループの足元の業績を押し上げてはいるものの、中長期的には、お客様の経営を圧迫することからリスクファクターにもなりえます。
加えて、世界的なサステナビリティ/ESGへの取り組みを背景としてサプライチェーンにおける人権尊重の機運が高まっていることなどから、コスト効率最優先の従来型のグローバル調達網は見直しを迫られています。
これら一連の動向から、今後の世界のサプライチェーンは、「地産地消」の方向性に単純化しながら再構築されていく可能性が高いとみています。当社グループは従来より海外事業の多くを現地パートナーとの協創によって展開し、現地法人に裁量を与えながら管理に徹する「地域完結型モデル」を推し進めてきましたが、今後はこれをさらに推進するとともに、北米・欧州・インド・タイ・マレーシア等で新たな事業展開を加速していきます。

※10 VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)

EC市場の拡大による産業構造の変化を、DXのさらなる深化によってチャンスに転換

事業環境におけるもう1つのポイントが、EC市場の拡大により国内外の産業構造が大きく変わった点です。卸売業や小売業が担ってきた調達/出荷/販売/サービスなど従来の機能の多くを大手ECプラットフォーマーが担い始めています。また、統合報告書でお伝えしてきた物流業界の「ボーダーレス化」もさらに進んでいることから、当社グループは、LOGISTEEDのコンセプトの1つである「金流」「商流」「情報流」「物流」の4流を束ねる取り組みを引き続き拡大することで、この変化をチャンスに転換していきます。
具体的には、コア事業である3PLにおける各種自動化をWMS※11やRCS※12によって進化させていくほか、サプライチェーンの可視化による全体最適化を進め、これらDXによって磨いてきたITシステムの外販も進めるべく、システム開発インフラのさらなる強化に注力していきます。

※11 Warehouse Management Systemの略で、倉庫管理システムのこと
※12 Resource Control System

「労働力不足」は「恒常化した事実」として捉え、「自動化」と「シェアリング」を進化させていく

また、EC市場の拡大とも深く関連する「労働力不足」や日本の「2024年問題※13」については、変化ではなくむしろ「恒常化した事実」として捉え、これまでの取り組みを進化させながら、引き続き対策を講じていく考えです。
具体的には、前述の各種自動化の進化に加え、人的資本も含めたリソースのシェアリングを同業他社や異業種のステークホルダーとともに進めていくほか、少子高齢化等の「課題先進国」である日本におけるこうした取り組みの成果を、今後少子高齢化が予想されるアジア圏にも適用していく考えです。

※13 2024年問題:働き方改革関連法案によるドライバーの労働時間の上限設定等から生じることが懸念される諸問題

脱炭素における「2030年問題」に対し、中長期視点で対策を検討

前述の通り当社グループは環境中長期目標2030/2050のもと、年平均でマイナス2.94%のCO2排出量削減に取り組み、2030年度のCO2排出量を2013年度比で50%削減することをめざしています。
「省エネ」「電化」「再エネ調達」「創エネ」「排出権取引」に中計期間累計で50億円の投資を予定しており、トラックのEV化や事務所・物流センターにおける再エネ電力への切り替えを積極的に推進するほか、物流センターへの太陽光パネル設置等による、「創エネ」など、中長期視点で対策を検討していきます。

マテリアリティの改定

新中期経営計画の策定に先立ち、事業視点を取り入れた新マテリアリティを特定

上記の事業環境認識のもと、当社グループは引き続き経営理念と経営ビジョンに基づき、さらなる事業成長と企業価値向上に注力します。そのための新たな経営計画等の策定に先立ち、当社が取り組むべき社会・環境の課題や果たすべき社会的責任を改めて認識するべく、マテリアリティを見直しました。新マテリアリティにおいては、従来のESG視点に加え新たに事業視点も取り入れ、「脱炭素・循環型社会への貢献」「強靭で持続可能な物流サービスの構築・進化」「協創による新たな価値の創出」から成る3つの「注力分野」および「注力分野を支える基盤」に対してDXを軸として取り組んでいきます。
そして、前中期経営計画「LOGISTEED2021」で得られた成果と新マテリアリティのもと、さらなる「事業の盤石化」と「グローバル展開」を進めるべく策定したのが、新中期経営計画「LOGISTEED2024」です。

新中期経営計画「LOGISTEED2024」

「アジア圏3PLリーディングカンパニー」をめざし、4つの重点施策を推進

2022年度からスタートした新中期経営計画「LOGISTEED2024」においては、「アジア圏3PLリーディングカンパニー」をめざし、「海外事業の強化・拡大」「新たな付加価値による事業領域の拡張」「スマートロジスティクスの進化」「ESG経営の基盤強化」から成る4つの重点施策を、スローガン「DX・LT※14・現場力でグローバルなサプライチェーン戦略パートナーへ」のもとで推進します。
具体的には、まず「海外事業の強化・拡大」においては、前述の「地域完結型モデル」に基づき、北米では顧客工場の構内物流運営の拡大、欧州では域内3PL事業の拡大、中国では自動化・省力化設備の導入加速、アジアではインド・タイ・インドネシア・マレーシア等成長市場での投資・事業拡大に取り組むことで、「アジア圏3PLリーディングカンパニー」をめざします。
次に「新たな付加価値による事業領域の拡張」においては、DXにより顧客サプライチェーンの課題解決や調達・製造・物流直結による全体最適化を図るほか、製造と物流における境界領域など、顧客バリューチェーンの物流周辺領域でVAS※15を提供していきます。
続いて「スマートロジスティクスの進化」においては、自動化・省力化やDXによって倉庫事業を強靭化するほか、三温度帯倉庫※16や危険物倉庫の整備・拡充によって倉庫機能を強化・充実させていきます。加えて、前述の「2024年問題」に向けた輸送事業の強靭化をフィジカル/デジタルの両面から進めていきます。
そして「ESG経営の基盤強化」においては、前述の新マテリアリティのもと、環境中長期目標の達成に向けて脱炭素化に取り組むほか、物流センターではAIやセンシング技術などを活用した「安全コックピット」で防火・防犯に向けた集中管理を実現していきます。また、新中計の一連の重点施策の実行を担う人的資本の強化にあたっては、グローバル人財やDX人財を増強・育成することで、LOGISTEEDを加速していきます。

※14 LT:Logistics Technology
※15 VAS:Value Added Services(付加価値サービス)
※16 三温度帯倉庫:常温・冷蔵・冷凍機能を備えた倉庫

中⻑期でめざす姿「LOGISTEED2030」

グローバル3PLリーディングカンパニーをめざす

中期経営計画「LOGISTEED2024」の策定と同時に、当社グループは、2024年以降を見据えた中長期の「めざす姿」を「LOGISTEED2030」に示しました。
「LOGISTEED2030」においては、2030年度における連結売上収益1.5兆円、海外比率50%以上の成をめざすとともに、前述の通りCO2排出量50%削減の達成をめざします。また、その過程においては下図の通り「SCM(サプライチェーンマネジメント)全体最適化に向けた高付加価値ソリューション」「DX推進による顧客利便性の向上と効率化」「海外向けの一貫したバリューチェーンの強化」「投資先行型案件への取り組み強化」「戦略的M&Aの推進」「プラットフォーマーとしての地位強化」といったさまざまな経営課題に対し、強固なパートナーとの連携で取り組んでいきます。
そして、今後の当社グループが「LOGISTEED2024」および「LOGISTEED2030」の実現をめざすにあたり最も重要となる新たなパートナーが、米国の投資顧問会社Kohlberg Kravis Roberts&Co.L.P.(関係会社および関連ファンドを含め、以下「KKR」)です。

LOGISTEEDの実現に向けた新たなパートナーシップ

「めざす姿」に向けた改革をKKRとともに進める

2022年4月28日に開示したプレスリリースおよび下記スキーム図の通り、当社グループは、HTSK(株)による当社株式に対する公開買付けに賛同の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対し、本公開買付けに応募することを推奨する旨を同日の取締役会で決議しました。この決議は、公開買付者が当社株式全てを取得することを企図していること、および当社株式が上場廃止となる予定であることを前提としています。
当社グループは、「LOGISTEED2030」の「めざす姿」を早期に実現するには、意思決定のスピードアップのみならず機動的な事業投資を実行できる投資資金の獲得や外部知見の導入など、当社の競争力を高める組織的能力を補完するパートナーとの協創が必要であり、そのためには、従来の資本構成に制限されない迅速な経営と改革を進めることが必要であると判断し、さまざまな検討を行ってきました。複数の事業会社や投資ファンドとの間で資本取引の可能性を含む当社グループの成長戦略について協議を重ねる中、特にKKRとは約5年間にわたり、事業成長の加速や将来の成長に向けた競争優位性について、当社による事業パートナーとのM&Aの可能性も含め継続的に議論を重ねてきました。その結果、前述の「LOGISTEED2030」の6つの経営課題に対する方向性についてもKKRと共有し、将来にわたり企業価値向上を推進するパートナーとしての信頼関係を構築してきたと認識しています。加えて、KKRが持つさまざまな支援能力や豊富な実績等を踏まえ、当社グループが掲げるLOGISTEEDを実現するには、当社事業への理解や、中長期的な企業価値向上を支援する知見、リソース、日本市場への強いコミットメントと豊富な実績を有するKKRとのパートナーシップにより、従来の資本構成に制限されることなく非上場化のうえ、ともに改革を進めることが最適であると判断しました。

海外事業の飛躍的拡大とDXの推進により、さらなる事業成長と企業価値向上をめざす

経営ビジョンとして「グローバルサプライチェーンにおいて最も選ばれるソリューションプロバイダ」を掲げる当社グループにとって、最大の経営課題は海外事業の拡大です。
「LOGISTEED2024」においては特にアジアでの事業拡大に注力することで「アジア圏3PLリーディングカンパニー」をめざすほか、その先の「LOGISTEED2030」においては、前述の通り連結売上収益1.5兆円、海外比率50%以上の達成へ向けた強い意志のもと、海外事業の拡大に向けて大きく舵を切ります。当社グループはこれまでも海外事業を支える人財育成に取り組んできましたが、今後はKKRの経験、知見を大いに活かし、海外事業の飛躍的拡大に挑戦します。そして、DXを国内外で推進しながら当社のアイデンティティである3PL事業を磨き続けることで、「グローバル3PLリーディングカンパニー」への進化をめざします。

ステークホルダーの皆様へ

CEO/COOによる新体制をスタート

以上の戦略を確実に遂行し、「ロジスティクスを超えてビジネスを新たな領域に導く」というコンセプトを確実に実現するには、M&Aを含む多くの施策をスピーディーに同時進行させる必要があり、2022年4月より、私が代表執行役会長(CEO)、髙木が代表執行役社長(COO)を務める新たな体制をスタートしました。CEOがポートフォリオ戦略や資本政策など経営戦略の策定・決定および実行状況のモニタリングを担い、COOは戦略の実行および持続的成長基盤となる既存事業の維持・拡大に集中することで、さらなる事業成長と企業価値向上を確実に実現していきます。
また、2021年11月に当社グループ会社の物流センターにおいて発生した火災につきましては、ステークホルダーの皆様に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。今後は前述の「安全コックピット」などDXを駆使しながら、安全、品質、生産性、防火、防犯を「見える化」により集中管理する強靭なセンターを構築することで、再発防止に努めます。
当社グループは一旦非上場会社となりますが、KKRとの強力なパートナーシップと財務基盤のもとで「LOGISTEED2024/2030」を着実に遂行することで、持続的に価値を創造してまいります。
ステークホルダーの皆様には、今後も変わらぬご支援・ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

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